丸亀城石垣復旧工事(継続中)
丸亀城では、2018年(平成30年)に西日本を中心に降り続いた大雨や台風の影響により、南東部の石垣が崩落しました。現在、復旧工事が進められています。
石垣の崩落
丸亀城は、標高66メートルの亀山に築かれた平山城(ひらやまじろ)で、多種多様な石垣に覆われた城郭を持ち「石の城」として全国に知られています。石垣の高さは日本一を誇り、現存十二天守・日本100名城の一つです。
石垣の崩落
丸亀城では、2018年(平成30年)7月から10月にかけて、西日本を中心に降り続いた大雨や台風の影響により、南東部にある帯曲輪(おびぐるわ)石垣と三の丸石垣が大規模に崩落しました。現在、2025年(令和6年度末)の復旧完了を目指して、復旧工事が進められています。
当初は、2024年(令和5年度末)の完了を予定していましたが、新型コロナ感染拡大防止のための緊急事態宣言による工事の一時中止、三の丸斜面のクラック、および埋没石垣の発見などにより1年間延長されました。
下の写真は、工事着工前(2019年1月)に撮影されたものです。南東部にある帯曲輪石垣と三の丸石垣が大規模に崩落したようすがよくわかります。復旧する石の数は、復旧石垣約4,200個・補修石垣約1,300個・埋没石垣約500個(推定)の合計約6,000個となっています。
着工前の様子(2019年1月)
現地の立て看板
復旧作業
復旧工事の大きな流れは次の通りです。
- 三の丸石垣の解体
- 帯曲輪石垣の解体
- 帯曲輪石垣の積み上げ
- 三の丸石垣の積み上げ
石材の管理
解体された石垣の石は、城内グラウンドで石材調査を行い、その後、石材置場となる綾歌総合運動公園(三の丸石垣約3,300個)、丸亀総合運動公園(帯曲輪約2,700個)の2ヶ所で保管されています。
すべての石に固有の番号が付けられ、寸法・重量・矢穴や刻印などの痕跡の情報などを記したカルテが作られています。崩落した石垣は、加工された石の隙間に小さな間詰石(まづめいし)を打ち込む打込接(うちこみはぎ)と呼ばれる手法が用いられたもので、この間詰石も同様に保管されています。写真の黒い土のう袋が間詰め石を入れたものです。
グラウンドアンカー工法
本工事では、掘削のり面を安全に切り下げていくために、グラウンドアンカー工法が採用されています。この工法は、グラウンドアンカーと呼ばれる鋼材を強固な岩盤に定着させ、モルタルを吹き付けた盛土層の表面に2メートル四方の四角い受圧版を設置して、緊張力で地盤を安定させるものです。除去式のアンカーで、石垣の積み直し時には撤去します。
グラウンドアンカー工法(イメージ)
丸亀城管理室だより No.1(令和2年3月13日)
石垣復旧PR館
2019年(令和元年)12月12日、復旧工事の進ちょく状況や丸亀城の歴史などの情報を発信する場として「丸亀城石垣崩落復旧整備事業PR館(石垣復旧PR館)」が開設されました。場所は城内グラウンドのスタンド付近、開館時間は9:00~16:30、年中無休です。
壁面に描かれているのは、丸亀名物骨付鶏のイメージキャラクター「とり奉行 骨付じゅうじゅう」です。積みなおすでござる!
石垣復旧PR館の屋上は、工事現場や城内グラウンドの石材置場を一望できる展望デッキになっています。ここにも「とり奉行 骨付じゅうじゅう」の姿が!
館内にある「石垣つめるくん」です。実際に石垣を積んで、構造を学ぶことができます。丸亀城の石垣と同じく、加工された石の隙間に間詰石を打ち込む打込接、かつ、石の高さを揃えて横目地を通す布積(ぬのづみ)とした「打込接布積(うちこみはぎぬのづみ)」と呼ばれる手法です。小さいながらも間詰石も再現されています。
石垣復旧PR館の横には、三の丸斜面で見つかった埋没石垣が屋外展示されています。三の丸周辺の石垣は、江戸時代にも崩れたという記録があり、見つかった埋没石垣はそのときの修復作業で埋められたものだと考えられています。
石材展示コーナー
場内グラウンドの西側にある石材展示コーナーでは、崩落・解体した石材の中から、特徴のあるものを選んで展示しています。手前の石には、石を割るときに使うくさびを打つための矢穴(やあな)の跡が残っています。
中央の石には、丸亀城の初代藩主である生駒氏の家紋「波引車(なみひきぐるま)」の刻印が残っています。
重量級
解体した石材の中から、特に重いものが展示されています。写真の石「BC角26」は、崩落時と思われる衝撃で2つに割れていますが、重さはなんと4,280キログラム!
これだけの重量がある石を、当時の人はどうやって切り出し、運び、積み上げたのでしょうか。当時の人々に思いを馳せるのもいいですね。
石垣修復情報
詳しい石垣修復情報は丸亀城のウェブページで公開されています。定期的に発行されている「丸亀城管理室だより(旧石垣復旧工事室だより)」は、工事の内容だけでなく、歴史的な背景など、図解入りで詳しく紹介されています。必読です。